ここ最近TVや新聞・ネットニュースの記事等で度々話題となっております「SDGs」。
なんとなく「環境問題への取り組みなのかしら?」と認識されているようにも感じますが、皆さまは「SDGs」にどんな意味があって、「ビジネスにおいて取組んで損はない」ということをご存知でしょうか?
そこで今回は、この激動の時代を生き抜くため、昨年までの経済情勢や課題を踏まえた上で、2022年に「中小企業もSDGsへの取組みが必要なのか」について取上げてみました。
2021年の日本経済振り返りと2022年の展望
2021年の日本経済の状況
2021年も前年に続き、新型コロナウイルス感染症に大きく影響を受けた1年でした。
内閣府が昨年12月8日に発表しました2021年7-9月期の実質GDP(国内総生産)成長率の改訂値は、前期比年率3.6%減となりました。
事前予想の同0.7%減を大幅に下回り、2四半期ぶりのマイナス成長となりましたね。
7-9月期は、東京五輪が無事開催されたものの、内需の柱の民間消費(個人消費)が緊急事態宣言等の発令による外出自粛等の制限が続いた影響などから前期比1.3%減と大きく落ち込みました。
また、半導体不足等により自動車生産量が低迷したことなどから民間設備投資が前期比2.3%減と大きく減少したことも、GDP成長率が再びマイナスに落ち込む要因の一つになったものと推測しております。
一方で外需(輸出-輸入)は、供給制約等を受けて自動車等を中心に輸出が前期比0.9%減と減少したものの、半導体等の輸入の減少が前期比1.0%減と上回り、外需はわずかにプラス寄与となりましたが、失速感は否めません。
10月に入り緊急事態宣言等が全面的に解除され、足元では飲食店で酒類の提供や時短営業の撤廃等、通常営業が再開され人流も回復したことから、サービス消費の増加や政府の経済対策により10-12月期のGDP成長率はプラスになる可能性が高いものと思われます。
とはいえ、7-9月期の結果は政府の事前予想を上回るマイナス幅であり、昨年には21年度全体をプラス3.7%成長と見込んでおりましたが、達成はかなり困難な状況となっております。
因みに世界の主要国では、日本だけが7-9月期にマイナスであるのが気になるポイントではあります。
2022年の日本経済の展望
では2022年はいかがでしょう?
日本経済新聞の調査等によれば、有力エコノミストのシナリオでは、2022年1-3月期の実質GDP成長率はプラス6.4%と予想されております。また通期でも3.0%ほどの成長が予想されております。
理由としては、内需の中心である消費の回復です。ワクチン接種の普及で感染者が急減し、先述のように緊急事態宣言解除を受けて商業地や観光地での人流が回復、活発な経済活動の継続が期待できるためです。
コロナ禍の消費抑制で、世帯平均50万円程の貯蓄が増えていると言われ、これも消費を下支えしております。
但し、新型コロナの変異株の出現による影響が懸念されるところではあります。
企業の設備投資も昨年から増加に転じており、機械関連の増強投資や物流施設の建設投資が全体を押し上げています。これらに加えDX化に向けたソフトウェア投資や脱炭素に向けたESG投資も、増加すると予想されております。
一方外需は、失速が長引く可能性があります。輸出は自動車など復調が予想されているものの、通販等オンライン需要拡大に供給が追いつかず、半導体などの部品供給も滞る可能性があります。部品不足の影響は資本財や情報関連財にも広がり、自動車以外の輸出も鈍化するおそれがあります。
供給制約により多くの国の生産や出荷が制限されれば、貿易取引が阻害されます。
もちろん、今後はこのような供給も回復していく予測ですが、物流の混乱や労働力不足など供給制約が解消されるには時間を要すると考えられています。
このような供給制約を理由に価格が高騰する場合、内需が腰折れしてしまう可能性もあります。
近年のカーボンニュートラル・脱炭素に向けた取組みにより化石燃料の供給強化はされにくく、資源価格に上昇圧力がかかるためです。
とりわけ日本は資源のほとんどを輸入に頼っている分、資源高は輸入相手国への支払を膨らませ、多額の所得を海外に流出させることになります。
2018年の国連統計によれば、日本の貿易取引に占めるエネルギー資源の輸入割合は2割超と主要国の中では最大です。このような資源高は企業収益を圧迫し、設備投資を抑制するおそれがあります。
さらに企業収益の悪化は、賞与の削減等を通じ、給与を減少させます。
こうした予想される物価上昇と賃金減少の両面から,消費が抑制される可能性は否めません。
加えて、ここのところの新型コロナの変異株(オミクロン型)を始めとする感染者数の急激な増加により、各地で「第6波に入った」ことも、個人消費への懸念材料です。
昨年7-9月期のGDPが世界の主要国にあって日本だけマイナスであり、景気回復に出遅れている点も鑑みれば、私見では2022年の我が国の経済情勢はメディアで公表されているほど「甘くない」と推測しております。
経営者の皆さまは、そのようなリスク(影響)を見据えて2022年以降に予想される大きな変化に対処し、経営にあたっていくことが肝要となります。
世界的な問題
次に、日本だけでなく世界規模での主要な問題についても2点ほど触れてみたいと思います。
地球環境の破壊
まず一番の大きな問題として、この100年間における「急激かつ一方的な地球環境破壊」が挙げられます。
各種メディアの報道等で皆さまもご存知の通り、森羅万象が汚染されており、現代の地球環境は異常事態といえます。
実に反自然的な営みの果てに、現在の新型コロナウイルス感染症を始めとするパンデミックが発生したともいえるのではないでしょうか。
多くの方が気付かれているように、新型コロナウイルス感染症は単なる健康だけの問題ではなく、人類の持続的な生存に関わる問題となっております。
一方で、海洋研究開発機構と名古屋大学などの研究グループによれば、この度の世界的ロックダウンにより、地上の汚染物質が軽減されたとの発表がなされました。
具体的には工場や自動車から排出される窒素酸化物(NOx)の排出量が少なくとも15%減少し、温室効果のある地上近くのオゾンも2%程度急激に減少したとまとめております。今回の減少スピードは、そのための政策を各国が続けた場合の15倍のペースに匹敵するといいます。
奇しくもこの人類の生存を脅かす世界的感染症が、逆に人類滅亡の危機を遅らせているという皮肉な結果となっているのです。
格差の拡大
もう一つの大きな問題としては、「格差の拡大」が挙げられます。具体的には国家・地域・階級・ジェンダー間の貧富の格差をいいます。
IMFとOECDのデータによれば2000年から2019年の実質国内総生産(GDP)の年平均成長率を見ると、中国は日米欧をはるかに凌ぐ9.0%に達していますが、所得格差の大きさを示すジニ係数(最大は1)は0.50程度と、格差が広がっており、幸福度は日米欧を下回っております。
米国もGDP成長率は2.0%ですが、ジニ係数は0.40と格差が広がっております。
一方で、北欧のGDP成長率を見れば、スェーデンで2.2%、フィンランド1.4%、デンマーク1.3%と高くはないですが着実に成長しながら、ジニ係数は直近で0.26~0.28に留まり、幸福度も他国に比較して高いです。
デンマークの「フレキシキュリティー」政策に代表されるように、競争を促しつつ再挑戦を容易にすることで格差を抑えながら成長する好循環を生み出しております。
日本で進む「国民総貧困化」
では、日本はどうでしょう?
GDP成長率は年平均0.7%と北欧を下回るのに、ジニ係数は0.33と北欧より高く、幸福度も低いです。
世界銀行が公表している「世界の1人当たり購買力平価GDP 国別ランキング(2020年)」では、37位と先進国では低い方です。
アジアで言えば、2018年に韓国に抜かれ、このままでは数年後には58位のマレーシアや60位のカザフスタンにも抜かれ、20年後には126位のベトナムと同じレベルにまで下がる可能性があると言われております。
我が国は、いつの間にか「ゆでガエル」状態であったのでしょうか?
バブル崩壊後30年間も実質賃金が増えない「国民総貧困化」という危機的状況に陥っているのです。
結果として日本の若者は将来に夢を持てなくなってしまっております(この点最近は、若者に夢を聞くと逆に「ドリハラ」と不快感を示されてしまうようです^^;)。
日本はもとより、先進国の多くで「もう生きることがつらい」とうつや自暴自棄の若者が増加しているのが、行き過ぎた物質至上主義の結果を顕しているのかもしれません。
求められるビジョン
現在の世界人口は79億人に迫っております。500年前は5億人、100年前は16億5000万人です。
つまり、この100年間でいきなり人口拡大したことになります。このままでは近い将来100億人の人々を地球で養わなくてはなりません。先述のように環境破壊や貧富の格差はさらに拡大していくことが予想され、飢餓もより増加することでしょう。
先進国は莫大な予算を使って、新型の兵器開発や国防を増強しておりますが、そんなことに鎬を削っている暇はないはずですね。
現在の経済システムの下に、我々が反自然的な営みを続けていくならば、将来的に日本はおろか人類全体が自滅してしまうおそれがあるのではないでしょうか?
従って、人類が永続的に豊かに暮らしていくためには、この世界的問題に対処すべく新しい経済システム(循環型社会)を構築していく必要があるものと考えます。
例えば、日本であれば経済政策にも盛り込まれた再生可能エネルギーの活用を含め、エネルギー輸入依存度を引き下げていく循環型社会の構築への取組みは、脱炭素やエネルギー安全保障といった環境保全の観点はもとより、所得増加や格差社会是正の観点からも有用といえます。
換言すれば、地球上の世界各国と取り巻く自然界が共生共感するという「共生ビジョン」を持つことが絶対的に必要とされております。
そして、この「共生ビジョン」の下に、日本だけでなく世界規模的問題を具体的に解決していくために有効な策の一つとして、「SDGs」への取組みが存在しているともいえるのです。
SDGsの思想
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略であり「持続可能な開発目標」を意味します。
簡単に言うと「世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界の皆で2030年までに解決していきましょう」という計画・目標のことです。
2015年の国連サミットにおいて193カ国全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限としており、17のゴール(目標)と169のターゲット(数値目標)から構成されています(※)。
※その詳細な内容は各種メディアにて十分に説明がなされておりますので、本記事では割愛します。
但し、この17のゴール・ 169 のターゲットだけをいくら読んでもSDGsに秘められたストーリーは読み解けないのですね。
実にSDGsに込められた想いは、そのゴール(目標)に至る前文とその後の宣言に記載されており、大きく次の4つの要素から構成されております。
- 世代を超えて
- 誰一人取り残さずに全ての人が
- 自分らしく自由に
- 幸せに生きられる
そのような素晴らしい世界を実現するための、『究極的に崇高な共生ビジョン』が描かれているのです!
従って、その実現のためにはこの地球上のあらゆる国家、機関、企業、コミュニティー等とその構成員である人間が、自身の社会的存在意義(価値)に気付いていくことが肝要です。
では、日本の99.7%を占める中小企業の内、約7割が赤字という厳しい経営状況で、中小零細企業もSDGsに取組む必要があるのでしょうか?
中小企業はSDGsに取組むべきか
企業は営利・非営利に関わらず、社会の公器として、その規模に応じ地域社会の成長・発展に貢献すべき使命があると考えられております(私も仕事柄、多くの経営者の方々とお話する機会がございますので、そのように実感しております)。
その意味では、人類の理想の世界を築こうとする「SDGs」の活用により利益を上げて存続し、社会に貢献することはその存在目的に適います。
具体的にSDGsへの取組みは、
- 個性的かつ高品質なイノベーションの源泉となり、
- ユーザーもSDGsに適った製品やサービスを求めていることから企業の存在価値を高め
- 将来の優秀な人財確保にも有効
と考えられます。
よって、企業がSDGsに取組むことは「メリット」だけであって、取組まない理由はないといえますね!
それは全ての法人等と人間が「地球の構成員」と言う意味で規模には関係なく、つまり大企業だけではなく、中小企業も(その規模が小さくとも)取組むべきことが望まれ、そのような企業が増えていくことにより、着実に「共生ビジョン」の実現に向かって歩武を進めていけるのです。
ここで重要な視点は、17のゴール(と169 のターゲット)はそれぞれ独立しているわけではなく、そのように見えたとしても、全てが関連して繋がっているということです。
現在の新型コロナウイルス感染症を始めとするパンデミックを例として関連性を見てみましょう。
※ⓝ番号は17のゴールの番号を示します。
:⑦、⑬、⑭、⑮
回避できたとしても、我々の生き方が変わらなければ
SDGs取組みのポイント
では、中小企業がSDGsに取組む際のポイントについて、事例と併せてご紹介致します。
SDGsに取組んでいる多くの企業が、自社のバリューチェーンの中で17のゴールの幾つかと紐づけして、そこで止まっているような形態が多いように思います(私たちも以前はそうでした^^;)。
もちろん取組まないより断然良いのですが、事業戦略への落し込みが上手くなされていない場合、実際に経営計画及び行動計画として具体的に実行されていないが故に、SDGsへの取組みが利益に繋がっているかどうか不明確になるおそれがあります。
これでは折角の素晴らしい取組みがもったいないですね。
これを回避するためには、次のような手順で取組みを考えていくことが有用です。
1)自社のコアコンピタンスを明確に定義します
2)そこからSDGsに適った付加価値の高い製品やサービス(※)を創りだします
※お金を払ってでもお客様に「買いたい」と言って頂ける製品やサービスといえます
3)上記1)、2)とSDGsのゴールが連鎖される形で事業戦略モデルを策定します
上記3)の連鎖が、皆さまそれぞれの地域社会において善循環することにより利益に繋がり、格差の縮小など世界的な問題を解決し、最終的に理想の世界に近づいていけるものと思料しております。
最後にイメージしやすいよう事例を2つ紹介致します。どちらもSDGsを上手に用いて説明されております。
本記事では詳細は省きますが、URLを載せておきますので、是非チェック下さいませ。
いかがでしょう?両社ともコアコンピタンスを強化するための戦略として、SDGsを捉えているのがわかりますね!
まずは、新しい循環型社会の経済システム構築のための活動をできるところから始めること。
できることの一つとして皆さまもSDGsに取組んでみませんか?
どのような状況・環境下であろうとも、一人ひとりが今の置かれた現状に感謝して日々を大切に生きていけば、
必ず未来は開けていく
のだと信じております。
僭越ながら弊所の取組みも参考までにご案内しますね。
取組む上で、ご不明な点等ございましたら遠慮なく問合せ下さいませ!
弊所会計グループにおいては、お陰様で昨年創業50周年を迎えさせて頂きました。
これからも皆さまの存続・繁栄を一番身近な伴走者として支えられるよう、新たな50年を目指し、弊所グループ一人ひとりが今を大切に、一歩一歩着実に成長・発展の道を皆さまと共に歩んで参りたいと存じます。
合掌
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