人間は現在が健康かどうかを健康診断で確認しています。
悪いところが早期発見であれば現在の医療技術で多くの病を治すことができますね。
これは、会社も同じ。今会社が健康な状態であるかを見極めるために経営分析があります。
国内市場の縮小に加え個人消費の停滞や物流コストの上昇及び中東情勢などの景気の下振れ要因により経営環境は厳しさを増しております。
そのような影響を受ける中、あなたの会社は今健康でしょうか?
財務諸表を使って誰でもできる簡単な指標を使って確認してみましょう。
会社の健康状態は一般的に「収益性」 「安全性」 「生産性」の3つの指標で図ります。
今回は、経営者なら自社が儲かる会社なのかを判断する「収益性」と、会社にとって血液ともいえる資金はどうなのかを判断する「安全性」をご説明していきたいと思います。
1.収益性分析
収益性分析とは会社の儲ける力を判断するものです。その代表的な判断指標が「資本利益率」です。どれだけの資本(総資本〔負債+資本〕)を事業に投入して、どれだけの利益を獲得したのかということを表しています。
たとえばX社とY社の二つの会社があり、どちらも450万円の利益を獲得したとします。これだけは収益性の点でどちらの会社が優れているか判断できません。
事業に投入した元手(資本)がX社は3000万円でY社は7500万円だったらどうでしょうか。利益の額は同じでもそれを少ない資本で獲得したX社の方が効率よく利益をあげたこととなります。
つまり、収益性が高いということです。
収益性は「資本効率」と「利益率」の二つの側面に分けられる
収益性を判断する指標で「総資本経常利益率」というものがあります。
総資本経常利益率=経常利益/総資本
総資本経常利益率」はさらに、「総資本回転率」と「売上高経常利益率」に分けることができます。
「総資本回転率」は投下された資本が売上として何回回収されたかを示す指標でこの指標が高ければ高いほど資本が効率的に活用されていると判断されます。
総資本回転率=売上高/総資本
「売上高経常利益率」は売上高に占める経常利益の割合でありこの数値が高いほど事業活動の効率がよいと判断されます。
売上高経常利益率=経常利益/売上高
例えば上述のX社とはY社の売上高がX社は15,000万円、Y社は75,000万円だとするとそれぞれの総資本回転率等は次のようになります。
①総資本 | ②売上高 | 総資本回転率 (②/①) | ③経常利益 | 売上高経常利益率 (③/②) | 総資本経常利益率 (③/①) | |
X社 | 3,000万円 | 15,000万円 | 5回 | 450万円 | 3% | 15% |
Y社 | 7,500万円 | 75,000万円 | 10回 | 450万円 | 0.6% | 6% |
資本効率を表す総資本回転率ではY社の方が勝っていますが、売上高経常利益率としては大きく下回っており、総合的な収益性(総資本経常利益率)ではX社の方が9%上回っています。
収益性を高めるための基本的な対策
前述のように総資本経常利益率は、総資本回転率と売上高経常利益率の比率から成り立っています。収益性を高めるためにはその両方を向上させる対策が必要となります。
①総資本回転率を高めるには、総資本を圧縮させる必要があります。貸借対照表を見直してみましょう。
→遊休資産の整理、不良在庫の処分、仮払金・貸付金等の整理等
②売上高経常利益率を高めるには、経常利益を増加させる必要があります。損益計算書を見直してみましょう。
→限界利益率(※)の向上対策、固定費削減の対策検討等
(※)限界利益率とは、売上高から変動費を差し引いた限界利益の占める割合を表したものです。
実際にはこの総資本回転率と売上高経常利益率は矛盾する関係になりやすいので注意が必要です。例えば設備投資によって製品のコストダウンを図り、利益率上げようとすれば、総資本が増加するため総資本回転率が下がるといった具合です。
したがって売上がアップしても利益率が下がることのないように利益管理を行ない、一方過剰資産を抱えることなく適正資本で資本回転率を高めるような、トータルで資本、資産管理を行う必要があります。
2.安全性分析
収益性は良くても財務面での安全性が弱くては本当に強い会社とは言えません。その意味で安全性分析は収益性分析と並ぶ経営分析の大きな柱となっています。
安全性には「短期的な安全性」と「長期的な安全性」の2つの側面があります。
短期的な安全性
企業の支払い能力の大きさを意味し、その分析については次の二つの見方があります。
①現時点において支払い資金が充十分に確保されているかどうか
②ある一定期間を捉えて、その期間における買掛金や諸経費等の支払を、その期間の売上代金等の資金収入でまかなえるかどうか
長期的な安全性
資金調達の健全さを意味します。例えば収益力の低下から資金調達のほとんどを借入等の負債に頼り、その結果総資本に占める自己資本の割合が低くなれば、それだけ債務超過に陥る危険性が高くなります。
また、回収に長期を要する固定資産への投資は、少なくとも自己資本+固定負債の範囲に抑えることが重要です。
安全性分析では、短期長期の両面をしっかりチェックしていく必要があります。
それでは安全性分析における主な指標について見ていきます。
【流動比率】(一時点での支払能力を見る代表的な指標)
流動比率(%)=流動資産/流動負債×100
「流動比率」は、短期間に支払いまたは返済しなければならない流動負債に対して、短期間に現金化される流動資産がどれだけあるかを示した指標です。
この流動比率が高いほど短期的な支払能力があり安全性が高いことを意味します。かつては「2対1の原則」をクリアすることが望ましいと言われました。流動資産が流動負債の2倍あれば短期の返済資金に困らないということです。
尚、現在は流動比率だけではなく、以下の項目も踏まえて考慮していただく必要があると言われております。
流動比率が低くても安全性に問題がない場合
①売り上げのほとんどが現金売り上げである、または売掛金の回収サイトが短い場合
②在庫が不要または在庫の回転が速い場合
③買掛金の支払いサイトが長い場合
→売掛金、棚卸資産が少なくなる、または買掛金が多くなるため、流動比率は低くなりますが安全性に問題があるとは言えません。
流動比率が高くても安全性に問題がある場合
①売掛金の回収が遅い、または売掛金に不良債権が含まれている場合
②在庫が過剰また不良在庫が多い場合
③仕入れの支払いサイトが短すぎる場合
→売掛金、棚卸資産が多くなる、または買掛金が少なくなるため、流動比率は高くなりますが安全性が高いとは言えません。
【当座比率】(当座比率の補完的な指標)
当座比率(%)=当座資産/流動負債
流動資産の中で棚卸資産が現金化されるまでに時間がかかっているとみられることから、流動資産から棚卸資産等を除いた当座資産が、流動負債に対してどれだけあるかを見るのが当座比率です。流動比率よりもさらに短期の支配能力を測る指標です
ただ、当座資産の中の売上債権に長期滞留分や不良債権が多く含まれていれば、的確な短期支払い能力を示すものとは言えません。
【経常収支比率】(一定期間における支払い能力を見る重要な指標)
経常収支比率(%)=経常収入/経常支出×100
※経常収入:売上代金、営業外収入の入金等
※経常支出:仕入れ代金人件費その他の経費の支払い等
経常収支比率は100%以上あることが原則です。100%を下回ることは経常収支で経常支出をまかなうことができないことを意味し、その不足分は借入金等でまかなわなければなりません。
100%を上回っている場合にはそれだけ資金余剰が発生しており、それを借入金の返済や設備投資に回すことができます。
現在のような企業を取り巻く環境変化が激しいときには、流動比率や当座比率等の一時点の支払い能力の分析だけでは、資金ショートの予測は困難です。経常収支比率のチェックとその原因分析は、資金繰りの安全性を図る上で非常に重要であると言えます。
【固定比率】(過大な投資かどうかをみる)
固定比率(%)=(固定資産+繰延資産)/自己資本×100
固定資産への投資は回収に長期を要しますので、その資金は返済の不要な自己資本でまかなうことが望ましいと言えます。自己資本の枠を越えて設備投資すれば不況期においては金融機関から引き締めに遭う可能性があり資金の状態が不安定になりがちです。固定比率は100%以下を目指したいものです。
【固定長期適合率】(固定比率の補完的な指標)
固定長期適合率(%)=(固定資産+繰延資産)/(総資本-流動負債)×100
固定長期適合率は、固定比率の基準を少し緩めたもので、分母に長期借入金等の固定負債を加えて計算したものです。
固定資産の投資を自己資本でまかないきれない場合に、返済期間の長い長期借入金等の固定負債でまかなう必要があります。固定長期適合率が100%以下であることはその原則が守られていることを表しています。逆にこの比率が100%を超えているということは、設備投資が短期借入金等の流動負債でまかなわれていることを意味し、短期的な資金繰りの安全性が損なわれます。
3.最後に
変化の激しい経営環境の中、スピード感のある意思決定が必要です。自社の経営状況を客観的に見ることができる決算書や財務諸表などを分析して経営に役立てるのが経営分析です。
そこで経営分析の基本となるのは貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表です。
弊所では財務諸表の作成の支援をさせていただいております。
財務諸表の作成のもっとも基礎となるのが「記帳」です。「記帳」とは、商品の売上・仕入、給料の支払い、経費の支払いなど日々発生する取引内容を帳簿に記載することを言います。現在では一般的には会計ソフトを利用して記帳を行います。とはいえ、記帳業務は手間も時間もかかります。
このようなことから、記帳業務を社外の専門家に任せたい事業者が増えており、記帳代行サービスが一般的になっています。記帳代行サービスを利用すると・・・
◇記帳業務にかかる手間や時間を削減できる
・・・事業規模が大きいほど取引量が増えますので業務負担の軽減効果が高まります
◇記帳ミスを軽減できる
・・・経験豊富なプロが記帳しますので記帳ミスがありません
◇人件費の削減につながる
・・・記帳代行にも当然費用が発生しますが、経理担当者の給与や社会保険料、福利厚生費、教育コストなどをトータルで考えると経済的メリットは大きいです
ぜひ、弊社の記帳代行サービスをご利用していただき、事業を成長させるために本業に集中していただければと思います。