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【経営】『あしたのために』今何をなすべきか?

先日、漫画家で『あしたのジョー』や『あした天気になあれ』などが代表作として有名な「ちばてつや」氏のご講演をお聴きする機会がありました。

著名な漫画家でいらっしゃるので、それこそボクシング漫画の最高傑作(と個人的に思っております)『あしたのジョー』関係のエピソードや漫画家としての武勇伝を期待していたのですが、内容はご自身の幼少期の戦争体験に始まりウクライナ情勢にも触れ「なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」といった人間の本質に迫る根源的なテーマについてご講演されたのです。

お話を伺っていく中で、紛争が各国の経済に与える影響だけでなく、常日頃の心構えの大事さに改めて気付かされ、事業を通し「今何ができるのか」「何をなすべきか」について考えさせられました。

さらに、その後弊所内での「とある出来事」を通し、経営の在り方についても再考させられることがありまして、今回はちばてつや氏の講演と世界情勢を踏まえ「『あしたのために』今何をなすべきか?」について取り上げたいと思います。

目次

1.人間はなぜ同じ過ちを繰り返すのか?

1-1.ちばてつや氏の幼少期のご体験


ちばてつや氏は、昭和14年生まれで今年83歳を迎えられました。漫画家デビュー66年を迎えるてつや氏は、お父様のお仕事の関係でご家族と一緒に満州へ渡り、昭和20年8月15日に6歳で終戦を迎えたそうです。

終戦と同時に世情は一変し、中国人の日本人に対しての暴挙に恐れ慄き、祖国を目指して同胞と共に 1 年掛けて歩いて中国を南下し、途中やむを得ず自分の子供を中国人へ託す人々がいる中にあって、てつや氏は力強いお母様に守られながら大変なご苦労を経験されて中国をなんとか出国できたそうです。

その後、日本の博多を目指す引き揚げ船の中では緊張から解放された安堵から死を迎えられた人も大勢おられ、亡くなった方々は海中へ遺棄され、皆で冥福を祈られたそうです。その中にはてつや氏のご親友もおられたとのことでした。

1-2.ウクライナ情勢に触れて


このような壮絶な幼少期の体験については、悲壮感を伝えたかったのではなく、私たち日本人が「忘れてはならない経験」として、「戦争は二度と繰り返してはいけない」という想いを伝えるために語っていただけたのだと思います。

なぜなら第二次世界大戦後77年経った現在でも世界ではどこかしらで絶えず紛争が起きており、特にウクライナにおいては多くの人々が戦火から逃れて国内外への避難を強いられていることを報道でも大きく取り上げられているからです。
そのような状況をてつや氏は憂慮され「なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」「平和な日本を大切にしたい」と語られました。

「なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」

戦争はモノだけでなくヒトをも破壊し、悲しみだけを残し、何も生みださない。
世界各地の経済にも影響し、多くの人間には何の得もないはずなのに...

我が国も例外でなく、経済に影響を受けております。

2.今後の世界はどうなるか?

2-1.主要国の状況


経済各紙の情報に基づき、主要な状況を簡単にまとめてみます。

1)各国でインフレ加速

最近の上昇率として、米国で8.5%前後(この5月に8.6%)と1981年12月以来、最も高い上昇率となっております。またヨーロッパ諸国でも7.0%台を記録しております。

価格上昇はウクライナ問題の影響を受けている食品とエネルギーが中心ですが、インフレが長引けば長引くほど、需要崩壊の危険が高まることになります。つまり、平均的な収入の人々が物価上昇の影響で支出を減らすおそれがあるということです。

2)米国経済減速のおそれ

上記1)のような状況にどう対処するかに対して、米国のバイデン大統領は「大企業と富裕層に公平な負担を求めることで連邦政府の赤字を減らす」と言っておりますが、すでに米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制のため、5月に0.50%と22年ぶりの大幅な利上を実施しております。これにより住宅着工数が抑えられ、個人消費も抑制されるおそれがあります。

3)ロシア・中国の孤立可能性

これまでは実態経済が活発な中国を中心とするビジネス展開でしたが、ウクライナ問題から、経済活動より政治を優先した政策をとることが考えられ、孤立化する可能性も想定されます。両国とも資源大国ですので、経済的に関係している国々への影響が懸念されます。

2-2.日本の状況


上記1.の各国の状況が日本にも大きく影響しております。日本経済は米国や中国とも深く関わっておりますので、物価上昇や円安進行による打撃は大きく、オミクロン株の急速な感染拡大もあり2022年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比-0.1%、年率換算-0.5%とマイナスとなっております。
※4~6月期の実質GDP成長率は対面型サービスの需要回復を主因としてプラス成長に復帰すると見込まれております。

7月以降も、ウクライナ情勢悪化による資源価格上昇や日米金利差拡大を受けた円安による物価上昇によって、消費が抑制されるおそれやコスト増加によって企業業績が悪化し、それが設備投資や雇用・賃金の削減につながるおそれがあります。つまりスタグフレーションが継続・悪化するおそれがあります。

また世界的な物価上昇を背景に、上記の様に米国をはじめとした各国で金融政策が引き締めに転じており、金利上昇が世界経済の回復ペースを鈍らせるおそれもあります。

さらに、日本では消費増税や人口が毎年60万人ほど減少していることから、そもそも購買力が低下しているところへ人手不足を背景に供給制約やコスト増の要因になるなど、景気回復の大きなブレーキとなるデフレスパイラル的リスクが顕在化しつつあると言えます。

2-3.将来への懸念


特に個人的に懸念しているのは、このような経済環境下にあって、これからの国の発展を担う若者がますます自国の未来に夢や希望を持てなくなってしまうのではないかということです。

NHK の「君の声が聴きたい」プロジェクトについて、ニュースでも特集されているので見聞きされた方も多いと思いますが、現代の日本の若者は将来に対する様々な不安を抱えていることが報道されています。

もしかすると現代の日本の若者は幸せを感じている人が少ないのかもしれない!?

因みに先進国の子どもの幸福度をレポートするユニセフの「レポートカード1 6」という報告書があります。
この報告書は、「精神的幸福度」、「身体的健康」、「スキル」という3つの指標から幸福度を測っておりますが、日本の子どもの幸福度の総合順位はいわゆる先進国 38 か国中 20 位でした。

総合順位では平均よりやや下に留まっているように見えます。しかし、その内訳を見れば「身体的健康」は1位でありながら、「精神的幸福度」が37位という最下位に近い結果なのです。

他の先進国と比較しても日本の若者の精神的幸福度は極めて低いという結果に日本の将来を懸念するのと同時に、このような結果を生みだしたのが私たち大人の責任とすれば、その大人にも同様の現象がみられるのではと仮説が立てられるのです。

つまり企業で働く大人たちの精神的幸福度も低い可能性があるのではないかと!

3.今なすべきこと


では、企業の経営者はこのような大変革期にどのように対処し、乗り越えていけば良いのでしょうか?

かの経営学者ピーター・ドラッカー氏は、「企業の目的は『顧客の創造(create a customer)』である」と定義されております。

それは換言すれば古より言われているような「顧客第一」ということであり、「お客様の立場で考える」こととも言えます。それも単に「顧客満足」だけではNGで、お客様の欲求はお客様自身がそれを明確に認識していないことも多いので、それを引き出す、つまり「ひとり一人の顧客の未来を考えて、今後必要な商品・サービスを(適正価格で)提示していく」ことが私たちに求められているのではないかと思料するのです。

簡単ではないですが、それを実現ならしめるためには、具体的には次の3つの取組みが大事と考えます。

1)自社のミッション・ビジョンを果たす
2)働いていただいている人々を活かす
3)地域社会へ貢献する

1)については、先程の通りお客様の欲求が明確に認識されていない場合もある中で、それでも尚お客様は私たちが提供する「商品やサービスを通じた満足・感動」を求めているのだということをしっかりと心に留めることが大事であると思うのです。

しかも、それを適正な価格で提供しないと、離れていってしまうおそれがあるのです。

そのために、自社のミッション・ビジョン・(もし作成されていれば)クレドなどの行動指針を常にスタッフに伝え、日々のお客様との業務の中で、実践できるように習慣化しておくことが重要です。
※クレドとは「企業全体の従業員が心がける信条や行動指針」を表したもので、企業理念とは違い具体的な行動ベースまで落とし込んだものとなります。

2)については、何よりも「働きがい」です。お客様に喜んでもらい、そのことが働く人々の「働きがい」につながっているかどうかが大切です。

特に日々の過大な業務負荷(自ら選択したとしても)で疲弊し過ぎてしまい、働きがいを感じられなくなる状態が続くと、精神的幸福度も低下するでしょうし、本当の意味で「お客様の立場で考える」ことはできなくなり、結果「顧客の創造」にはつながらなくなってしまうことでしょう。

もちろん適切に頑張っている人には、相応の経済的手当を行うことがとても大事ですね!

これらの点は、頭でわかっていても、相手の状況を細やかに観ていないと、実際はギャップがある場合も往々にしてありますので、本当に経営者としては気を付けなければならない点だと思います。

3)については、いわゆるCSR(Corporate Social Responsibility)とほぼ同義で、自社のイメージアップのために行っている企業も多いかもしれませんが、社会の公器・一員としてまずは地域社会への貢献が大事と考えます。それが巡り巡って自社の「顧客の創造」につながるのです。

その意味で、最近はニュース等でも取り上げられることが多くなってきている各企業・団体等での「SDGsの推進」が一過性のブームで終わることがないようにと願っております。

以前のコラムにも取り上げておりますが、私たちもSDGsの目標をささやかながら掲げておりますので、地道な取組みを継続できるように、実践して参りたいと存じます。

参考:弊所の取組み

4.初心忘るべからず


上記「3.今なすべきこと」で述べた3つの取組みは、いずれも企業経営においては基本的なことであり、熟練された経営者の皆さまにとっては、お釈迦様に説法であって恐縮なのですが、まだ若い経営者の方の閲覧を考慮し、基本的ではあってもこの大変革期を乗り越えていくために必須の取組みと考え、記載させていただいております。

さて、冒頭の「なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」についてですが、そもそも人間には「エゴ」がある限り仕方がないことなのかもしれません。

ただ、エゴであればコントロールできるはずですね(決して簡単ではないですが–;)。
そのために「意識」を変えることが必要ですし、「教育」(特に幼少期からの)が重要なのだと思います。

故に、てつや氏はご自身のミッションとして漫画を通して子どもたちに『勇気』や『希望』など「人として大事なこと」を伝えるために描き続けておられますし、これからも初心を忘れず、生涯をかけて取り組まれていくのだと拝します。
そして、ちばてつや氏の作品はこれからも未来の多くの子どもたちに(だけならず大人たちにも)『勇気』と『希望』を与え、後世に引き継がれていくことでしょう。

では、私たちは「未来を担う若者たち」に、そして「未来の世界」に何を遺していけるのでしょう?

実は私も少年時代『あしたのジョー』に熱中し、「ハングリー精神で諦めなければ道が開ける」という勇気と希望を主人公の矢吹丈からもらっていたことを思い出しました。ただ「喉元過ぎれば」で、いつの間にか自分も「ゆでガエル」状態に陥っていたのでしょう。「ハングリー精神はどこへやら?」状態を反省致しました。

今一度初心にかえり、「顧客の創造」という意味でのハングリー精神を持ち、諦めずにお客様の発展『100年企業創り』のために支援し続けることを自社のミッション及び事業ビジョンとして改めて確認・意識致しております。

またそれ以上に働いていただいているスタッフへの感謝を基に、成長のための教育強化に加え、その反作用をケアし、働きがいや幸福度を強化する仕組み作りも課題として認識致しました。

そして、自社にて学んだことはお客様にも今後提供するサービスの中で還元して参りたいと考えております。

講演の最後に代表作『あしたのジョー』の主人公である矢吹丈の原画をキャンパスへ描いて下さいました

矢吹丈の原画

まずは、『基本に立ち返り、足元を固めること』

どのような状況・環境下であろうとも、一人ひとりが今の置かれた状況に感謝できて日々充実して生きていければ、そのような人々が所属する組織・機関・地域社会ひいては国家には必ず明るい未来が開けていくのだと信じております。

そして、若者のためにそのような環境を整備するのが行政や学校の役割であり、企業では働きがいのある環境を準備するのが経営者の役割であって使命(ミッション)でもあることをちばてつや氏の講演などを通して実感しましたので、今回取り上げさせていただきました。

『3つの取組み』を行う上で、ご不明な点等ございましたら遠慮なくお問合せ下さいませ!

これからも皆さまの存続・繁栄を一番身近な伴走者として支えられるよう、私たちも『100年企業』を目指し、弊所グループ一人ひとりが今を大切に、一歩一歩着実に成長・発展の道を皆さまと共に歩んで参りたいと存じます。


合掌



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